神学校ライフまとめブログ

自然の中で学び伸びる。

ありふれた大冒険

 先日の、広島がサミットに入っていた時のお話。

広島ではG7サミットに伴い、私の地域も学校や保育園はお休みに。妻は仕事でしたので、授業もお休みになった自分(父)と子供2人で過ごすことになりました。

神学校の敷地はかなり広く(1,000平米?)、子供が遊ぶには十分の広さです。

その日もボールで遊んだり自転車乗ったり、楽しく遊んでいました。

 

事件が起きたのは午後2時頃。子供2人で外で砂遊びをしていました。私は疲れたので家で少し休んでいました(これがいけなかった)。

私荷物が届いたので(私が注文したセールで買った中古本だったのです、この話も面白い流れがあるので今度載せます)それを受け取りのため応対しました。そこへお兄ちゃんも帰ってきました。2人で本を開封し、いろんな本が入っているねーと眺めていました。

悦に浸っていましたが、やがて弟くんはどうしたかと見にいきました。それまではぞうさんじょうろで砂に水をかけて、一生懸命何かを作っていたのです。

ところが、外に出てみると、どこにもいないのです。

弟くんは葉っぱが好きで、葉っぱを持って落としたりするのが好きだったので木の辺りを探してもいない。ボールの近くも、自転車の近くも、中庭も、どこにもいない。

最初はそれでもどこかに隠れているのだろうと思っていたのですが、隅々まで探してもいません。

まさか、1人で神学校を出てしまったのか?

仕方ないのでお兄ちゃんを連れて、神学校から出て、坂を下っていきました(神学校は山の中腹にあるのです)。

少し降りたところに、おじいさんが農作業中だったので小さな男の子が通らなかったから聞いてみました。すると、

「ついさっき下に降りていくのを見たよ」と言われました。

神学校からいつも通る道を探してみます。ところが、弟くんはなかなか見つからず。見晴らしのいい場所まで来たのですが、4歳児で行ける範囲の場所には見つけられませんでした。

なりふり構わず、近くを歩いていた小学生にも、散歩していた方にも尋ねてみますが、確かな情報は得られず。地域パトロールの方にも事情を説明して協力していただきました。

一度戻り、車で探しにいくことに。

ひとつ予測できる行く場所がありました。それは以前住んでいた家です。そこは下って1kmほどのところにあり、弟くんも道は熟知していたので(実は一度1人で前住んでいた家から私を追いかけて神学校の方に歩いていたことがありました)、そこへ行きましたが、その家にも、その通りにも見つかりませんでした。

途方に暮れた私は、最後の手として警察に連絡しました。頭にはあったのですが、まさかそこまでになるとは思いませんでした。全て私が目を離していたのが悪いのですが。

警察に連絡し、事情を説明しました。警察の方は付近の交番に確認して下さいました。

「子供は自分で名前を言えますか?」

「4歳なのでしっかりとは言えないです」

「子供さんはどんな服を着ていますか?」

「黒い服にグレーのズボンを着て、黄色い長靴を履いていました」

「お子さんは服に泥がついていませんか?」

「!!!そうです。泥遊びをしていたのでついていたと思います」

「◯◯交番でお子さんと思われる子供が保護されているようです。行ってみてください」

 

その交番は弟くんが通う保育園近くにある交番でした。行ってみると、警察に囲まれて、でもしっかりとした顔でいる弟くんの姿が。

私とお兄ちゃんが到着すると、抱きついてきました。でも、泣いたりしないんです。黙って抱きついてきました。

身元確認をし、私が親であることを証明すると、警察の方が表情を崩して優しい顔で事情を説明してくださいました。「この子は近くの小学校の辺りを歩いているところを、目撃者が心配して警察まで連れてきてくれました。泥だらけだったので、事件に巻き込まれたのではないかと心配したそうです」

泥だらけだったのは泥遊びをしたからと説明し、感謝をお伝えしました。

弟くんは1人で2kmの距離を歩いていたのです。神学校から下り坂を越えて、車通りの多い道を越えて、前住んでいた家を通り過ぎ、一路まっすぐ、もしかしたら保育園を目指していたのかもしれません。

なんという記憶力。そこまでの道は一本道ではなく、多くの分かれ道があるし、一本間違えれば迷ってしまう。それに、途中見通しが悪い道があり、小さい子は見過ごされやすいので車に跳ねられたのではないかと心配でした。無事に守ってくださったこと、警察の方たちの誠実な働きを神に感謝しました。私自身の過失を、神は拭って下さったのだと思いました。

交番で警察の方、パトカーで送ってくださった警察の方にそれぞれお礼を言って、車に戻りました。弟はそれからも全く泣かないんです。ずっと平然としていました。おそらく、この4歳の男の子には大冒険だった出来事が、ひとまわりたくましくしたのかもしれません。

それから、弟くんはひとまわり成長しました。それまではどちらかといえば泣き虫で、何かあるとすぐ泣いてしまう子供だったのですが、この日を境にあまり泣かなくなりました。何かあったら自分の言葉で主張するようになりました。

かわいい子には旅をさせよ。そう言いますが、弟くんは自主的に旅に出て、ことわざの意図する通り、ひと回りたくましく成長したようでした。